「…あの、獅貴?」


「なんだ紫苑、可愛い顔して」



正確には困った顔だが、この男のもとにはそれすらも可愛い顔にカウントされるのか。

なるほど、獅貴はモテるな、女の子にこんな優しい扱いをするんだから…、




「他の雌豚とは比較するまでも無い、天使だな」




優しい扱いを、する…??


なにやら物騒、というか最悪最低な発言が飛び出したような気もするが、まさかね、という超現実逃避を展開して気の所為で終わらせる。


イケメンが女の子を雌豚呼びなんて、世界中の乙女の夢が粉々に崩れ去ってしまう。


まぁ、そんなことはとりあえず置いといて。


「なんで昇降口に居座ってるの…?そしてずっと私にくっついているのは何故…??」


困惑気味である。


理由は簡単。何故か獅貴が私の動きを観察して、一向に帰ろうとしないからだ。


獅貴は不思議そうに首を傾げて、当然のように答えた。



「…?一緒に帰るんだから、ずっと紫苑のこと待ってたに決まってるだろ…?」


「え?」


「うん?」