「…取り敢えず、大人しく横になって下さい。この怪我です、無駄な礼儀は必要ありません」


「は、はいッス…」



恐縮そうな態度がいまいち治しきれていないが、この話し方はたぶん琥太の癖だから見逃してやろう。敬語使わない琥太とか見たことないしな。それは俺もか。


変なところで共通点あったんだなぁ…と椅子に座り直してどうでもいいことを考えながら、言われた通り従順にベッドに戻る琥太を見届ける。


肋が折れているのだろう。上半身を片手で抑えながら、痛みに歪む顔で横たわる彼は酷く辛そうだ。左足も骨折していたから、やはりかなり重症らしかった。



「…体動かさなくていいですからね。一応聞きますけど、話すことは出来ます?」



話したらどこかに響くとか、もしそうだったら大変だ。そこまで痛みを負わせてまで無理やり聞き出すことは無い。


琥太は「大丈夫ッス」と小さく頷く。首は動くのか、と思いながら「そうですか、それなら良かった」と微笑を返した。




「…貴方を"助けた"のは、誰ですか」




俺の言葉に目を見開いた琥太。一番初めにこれを聞くのが想定外だったのだろう。普通なら「誰にやられた」と聞くのが最初だ。


けれどそれよりも、琥太が治療を受けた後真っ先に疑問を持ったこと。医者が感心したような目で俺達を見てきたことに違和感を覚えて。