三年前、俺は先代の総長に、ANARCHYのその後を託された。その時には既にネオン街の治安も大分良くなっていて、抗争が起こることも稀だった。


俺は特段喧嘩が強いというわけでは無かった。ただその時の総長のお気に入りが、俺だったというだけだ。


家庭環境の問題で、家には帰らなくなった。俺を裏路地で拾った先代は、喧嘩の出来ない俺でも快く受け入れてくれた。それは幹部の人達も下っ端連中も、同じだった。


流れる時間の中で、俺は幹部に選ばれた。なぜ俺なのかと問うと、総長は笑いながら言った。




『お前の作る飯は、めちゃくちゃ美味ぇからな』




料理の出来ない馬鹿連中たちに、お前が何か作ってやれよ。総長は、楽しそうに笑っていた。


日々は族のものとは思えないほど穏やかで、だからこそその時のANARCHYは、"強さ"で立場を選ぶことはしなくなっていた。


俺は喧嘩は出来ないものの、人を引き寄せるカリスマ性はある、らしい。総長が言っていた。だからお前を選んだ、それも理由の一つなのだと。



両親が離婚して、俺は親父に引き取られることになった。4つ歳下の弟が居たが、弟は母に連れられてしまい、俺はたった一人の兄弟と離れ離れになってしまった。



兄弟仲は普通だった。けど俺の大切なものと言えば、真っ先に弟が出てくる。俺に興味を示さない親と居るよりは、弟と居る方が余程楽しかった。



その弟と会えなくなってしまった。その事実に、酷く落胆していた。その後高校生になっても喪失感は消えず。俺は所詮子供だった。