「…ここ、どこ」



はぁ…とため息をついて思い至る。そういえば私、重度の方向音痴だったな、と。こんなだだっ広い校舎を歩き回れば迷うのも無理はない。



何も考えずに出てきたせいで、今までの道も覚えていないし。



どうするかと考えて、視線の先に少し開いた扉を見つけた。先程から辺りを探っていはいるが、ここはどうやら特別棟のようで、空き教室が多い。扉が開いたところは珍しいなと、近寄ってみる。



もしかしたら誰か居るかもしれない。そう思って中を覗いたのだが。




「………っ」




「…あ、」




そこには確かに人がいた。獅子のような金色の髪を揺らした、男子生徒が。



驚いたように目を見開いた彼は、何も言わずに静止する。暫く見なかったから懐かしく感じるなとぼんやり思いながら、中に入って後ろ手に扉を閉めた。



引き戸がガラガラと音が鳴らす。そういえば私のこと嫌がってたよな、と思い出して、あまり近寄らず入口付近で足を止めた。