翌日は十時に奏多さんのお迎え。
正直言うと、昨日はあのままマリーナベイに連泊になるのかなって思っていた。けれど、そうはならなかった。
奏多さんは夕食が終わると私をホテルまで送ってくれた。


「おはよう」
「おはようございます」

昨日と変わらぬ爽やかないでたちの奏多さん。
私も普段着でいいよって言われたからスカートとサマーニットにした。

「じゃあ、行こうか?」
「はい」

昨日は徒歩と地下鉄とタクシーの移動だったけれど、今日はホテルの前に車が待っていた。

「これって・・・」
「会社の車だよ」
「へえー」

普段は運転手付きの車に乗っているってことか。
やっぱりセレブなんだ。



向かった先は超有名ブランドのショップ。
大通り沿いにあって人気のお店だけれど、敷居が高くて私にはなかなか入ることができない場所。

「いらっしゃいませ」
品のよさそうな女性店長に日本語で迎えられ、私と奏多さんは3階のVIPフロアーへ通された。


「どのようなスタイルがお好みですか?」

まずはソファーに案内され、コーヒーが出されたところで私にかけられた声。

「そうですねえ・・・」
どのようなって言われても、ブランドの服なんて縁がなくてよくわからない。

「お任せするから、この子に似合うスタイルを提案してください」
困っている私の代わりに奏多さんが答えてくれる。

「かしこまりました」
深く頭を下げた店長は静かに消えていった。