×月×日

「幼き頃、預言者の女に告げられた事があります。 いつか隣で目覚めし時、出会うだろう、と。 それは我が国を繁栄に導き、共に幸福をもたらす」

「娘のリリィがそうだと……?」

「その言葉を忘れた事はありません。 ですが、意味としては国の中枢に関わる人物か或いは一夜を過ごす商売女なのだろうと考えていたので、伴侶という意味としては全く捉えていなかったのです。 だからこの国に来たのも、リリィに出会ったのも預言とは無関係だと思いました」

「娘が預言に関係していると気づいたのはどうしてなのです?」

「預言は預言であり、確定ではないと思っています。 だからこそ彼女に出会って短い月日ですが、これまでに感じた事のない感情を抱いている自分に気づき、悲嘆に暮れました」

「ジェイ……」

 私の瞳を見ながら話すジェイの言葉が愛おしく感じられるのが嬉しい。

「彼女はロナウドの婚約者だったのです。 その事実に私がどれだけ足掻いたところで何も変わらないのですから。 例え、ロナウドの気持ちが別の女性にあったとしても」

 ロナウドが苦痛を伴う表情をしている。
 私への懺悔と後悔と裏切りを抱えて来たのだろう。