×月×日

 現れたのは見た事もない上等な布地と仕立ての良い背広にスラリとした皺や汚れ一つないズボン、ピカピカに磨き上げられた靴、そして手には立派な帽子。
 顎髭もなく、髪も綺麗に後ろに流してまとめられている。

 幾日汚れたままなの、なんて発想も湧かないような、まさに上位貴族そのもの。

 見惚れる、とはこういう場面で使うのが正解なのだろうと思えて、思わず笑いが込み上げて来た。

「見違えたわ」

 立ち上がって側に近づき、全身を眺める私を楽しそうに見つめる彼。

「さすがに執事に怒られてね。 お迎えに行くのですから綺麗になさって下さい、と目を吊り上げるのさ」

「正装で来たらどうしようかと思ったわ」

「その方が良かったかな」

「いいえ、ご立派な姿よ」

 居間の入り口付近に立ち、笑って親しげな光景にロナウドとロージーは顔を見合わせて不審さを募らせる。
 そんな中、お父様とお母様だけはソファーから立ち上がり、挨拶をする。

「ようこそ、お越し下さいました」