考えもしなかった。


だって真広と会ったのは今日が初めてのはず。
初対面じゃなかったの? 藍子は違ったけど。


「いつの話?」

「幼稚園? いや違うか。小学校、の時ぐらい」


そんな昔の事。
思い出せる記憶の範囲は限られているのに。

こんな人いたっけ? 目立たなかったんだろうか?
幼稚園は一緒だった? 小学校で出会ったのか?

色々と考えてみても全く思い当たる節がない。


「......ごめん、記憶がない」


申し訳なくなりながら謝る。「そっか」と、小さく呟いた真広の顔が寂しそうだった。そのままベッドに向かって腰かけると、真広は俯いた。どうしよう。一気に気まずい空気になってしまった。