疑いをかけている私に気づいたのか、ココはしっかりと目を合わせる。

何かを伝えたい、という気持ちが目を見て分かった。


「……私が月島くんのことが好きなのは、誰よりも優しいから。少なくとも私はそうだと思ってる」


風が吹きだして、桜が散った。

ココの綺麗な眼には私のシルエットが映っていた。


「月島くん……月島那智っていう人なんだけどね。
2年前くらいかな、私を助けてくれたの」


出てきた名前らしきものにピンとする。

ツキシマナチ、ナチ?

ナチって確か、可愛い名前して無口で無表情な──


「……金メッシュの人?」

「え、うん。見たことあるの?」


とっさに「うん昨日屋上で会った!」と言いそうになったからあわてて口をふさいだ。


「うん、その人が私を助けてくれた。
見ず知らずの私のこと、当たり前みたいに」


話を続けるココの眼には偽りなんてなかった。

本当のことを言ってるんだと思った時、ひとつの考えが頭を巡った。

やっぱり屋上言ってみようかな、と。