庭園で炎のグリフォンが暴れまわった事件から、三週間が経った頃。
魔法による修復が終わり、すっかり綺麗になった庭園内のテーブルセットでお父様とお茶をしていたら、お父様が「そういえば、お前に手紙が届いていた」と真っ白な封筒を手渡してきた。
「えっ。お手紙ですか?」
まさか社交界ぼっちな私宛にお手紙がくるなんて。
この世界で生まれて初めての同世代からのお手紙に、訝しんだ私はまず封蝋の紋章を確認したが、見覚えがなく首をかしげる。
とりあえず読んでみるか、と便箋を広げると花の香りがした。雅だ。すんすん、この香りは……林檎の花!
どうやら私が林檎好きなことに配慮してくれているらしい。ここまでしてくれるということは、毒林檎令嬢なんて異名を恐れていないという意味になる。
えっ、ますます誰?
差出人の名前はないが、お父様が直接手渡してくれたので貴族の子供なのだろう。