ケータイ小説 野いちご

毒林檎令嬢と忠実なる従僕〜悪役はお断りなので番契約を破棄したら溺愛過剰な狼の独占欲を煽ってしまった〜

✧3✧ 僕の箱庭


 猛々しい咆哮を上げて迫り来る炎の獅子から逃れるため、アルトバロンの腕の中に抱き寄せたお嬢様――ティアベルは、その空間に入った途端にくたりと全身の力を抜き意識を失ってしまった。

 アルトバロンはこの空間においては必要のなくなった剣を鞘にしまい、彼女を抱え直す。

「お嬢様、大丈夫ですか。お嬢様?」

 腕の中で眠る少女へ呼びかけるが返事はない。
 何度か呼びかけてみて、やっと「……ぅう、ん」と小さな呻き声がかえってきた。

(……まさか、どこかに怪我を!?)

 首までレースの装飾に覆われた露出の少ない真っ赤なドレスを着ているので分かりにくいが、見た限り血痕はないため衣服の下に怪我を負った様子はない。磁器のように白い肌には砂埃による汚れがあるものの、火傷の痕もなさそうだ。
 熱風を吸い込んだせいで喉や肺がやられていたら、と危惧したが、異常な汗の量ではないし、呼吸も安定している。

< 73/ 182 >