「……ん……っ……」
「あ、アルト? 起きたの?」
眠っていたアルトバロンが身じろぎする。声をかけると、彼の睫毛が震え、ゆっくりと閉じられていた瞼が開いた。そこにあったのは、綺麗ないつもの色。
「……お嬢様。それに、旦那様も」
「アルト、起き上がらないでいいから寝ていて」
アルトバロンが急いで上半身を起き上がらせようとしたので、彼の肩に手を添えて、ベッドへ横になっていていいのだと伝える。
しかし、彼は絶望に染まったような顔で「いえ。そんな場合では」と言い募ると、結局起き上がり、こちらに向かって頭を下げた。
「申し訳ありません、旦那様。お嬢様の従僕として、最悪な事態を招きました。僕にどうか、罰をお与えください」
「何を言う。お前はよく堪えた。あれほどまでに堪え抜くなど、普通の獣人にはできないだろう。罰など与えぬよ」
「しかし……!」