どうせならさっそくこの仮面をつけてみよう。


校舎を出たクルミは近くの公園のトイレに入り、仮面を見つめていた。


このまま帰ってもどうせ勉強をさせられるだけだ。


それなら少し遊んでいってやろうと考えたのだ。


クルミは手洗い場の鏡の前で自分の顔に仮面を当てて「ガオー」と怪獣のような声をあげて見る。


しかし仮面は能面なので全然迫力はでなかった。


「そうだ。マジックで顔を描けばもっと面白いかも」


思い立ってペンケースからマジックを出すため仮面を外そうとした。


その瞬間、仮面はクルミの顔に吸い付いてきたのだ。


ツルリとした心地のいい感触にクルミは両手を離す。


しかし、仮面は顔に引っ付いたまま離れない。


なに!?


悲鳴は喉の奥にかき消され、変わりにクルミの足は勝手にトイレから出ていた。


そのまま早足でどこかへ向かっているが、どこへ向かっているのかわからない。