外は湿度が低くカラッとした青空が広がっているが、6畳のフローリングの部屋は湿度が高く湿っぽさを残している。


電気もつけず、窓も開けないまま恵一はヘッドフォンを耳に当てて体を小さく揺らしていた。


時折リズムに乗って歌詞をくちずさんでいるが、それはほとんど聞き取れなかった。


壁一面に張られた地元を拠点として活動しているアイドルのポスター。


本棚には女性アイドルの写真集がところ狭しと置かれていて、小さなテレビは見てもいないのにつけっぱなし。


家の中から恵一を呼ぶ母親の声が聞こえてきたけれど、恵一は音楽に身を任せていてその声にも気がつかなかった。


薄暗い部屋の中、恵一が体を揺らした時に発せられる服のすれる音が絶え間なく聞こえてくる。


全国ニュースを告げていたテレビは時間が経過して、地元ニュースへと切り替わっていた。


《また、野良猫が殺害されました》


深刻そうな表情で地元ニュースを読み上げている女性キャスター。


話題はここ一ヶ月くらい続いている野良猫殺しの報道だった。


野良猫の首を絞めたり、腹を切り裂いたりという方法で残酷に殺す人がこの町のどこかにいるらしい。


しかし、そんな残酷なニュース報道も、恵一の耳には一切入ってきていなかったのだった。