優雅さんの運転で都内の大きな公園に連れてきてもらった。彼は車で去り、私と風雅は公園を歩く。真夏の陽気だ。私も風雅も帽子や日傘など陽光を遮るものは持っていない。

「あっついねえ」

風雅はジャケットを脱ぎ、シャツの前をくつろげた。

「希帆、木陰を歩こう」

背の高い木々の間を歩いた。散歩する人たちは皆、このルートを選ぶようだ。暑い日だけど、結構人がいる。

「俺ね、ああいう汚いところを希帆に見せたくなかった。反社会的な団体との付き合いこそないけれど、そういう連中に負けない組織作りはしてるつもりだから」
「榮西の敵は、風雅が潰すの?」
「そう。親父は優しいし、気づけば内部にスパイもどきがいっぱいでさ。大学時代から優雅と、親父の部下たちと組んで、社内の浄化活動をしてきたんだよね」

浄化活動というのは、先ほど見たようなことも含まれるのだろう。

「ちっちゃな会社もばんばん潰したよ。邪魔なもの、危険なものは、俺が壊す。これからもそうする。トップに立ってもね。恨まれて憎まれて、それでいいと思う。……でも、こんな俺は、希帆には重たいでしょう」

風雅がクスノキの大木に歩み寄る。梢を見上げ、私には背を向けたままだ。

「希帆の中の俺は、迷惑なクラスメイトのままだと思う。変なヤツくらいに思ってるでしょ。でも、俺ってこういうやつなんだ。結構悪役寄りっていうかな。希帆と世界が違うのは、知ってるんだ」

私は風雅の隣に並び、共に木々の枝葉を眺めた。
向こうに青空が見える。頬から首に汗が伝った。