「いらっしゃい、紅音さん」

「こんにちは、お母様」

「紅音さん!もう体、大丈夫なの?」

 それから1ヶ月が過ぎようとしていた。今日は爽太さんの家族と月に一度の食事をする日だ。
 わたしが事故に遭ってから、みんなわたしを心配してくれるようになった。爽太さんはあれから過保護になってしまい、わたしが仕事に行く度にちゃんと帰ってこれるのか、心配するようになっていた。

「大丈夫ですよ。傷口ももう、塞がりましたから」

 あれからわたしは、定期的に錦総合医療センターへと出向いていた。
 傷口の状態などを確認しているけど、以前よりも傷口はだいぶ塞がってきていて、ちょっとだけ安心した。

「良かった……。あの時は本当に、どうなるかと思って心配したのよ?」

「ご迷惑おかけしてしまい、申し訳ありません」

「謝らないで? こうして無事に生きてさえくれれば、わたしたちはそれだけでいいんだから」

 お母様のその言葉にわたしは、嬉しくなってつい微笑みを浮かべてしまう。

「ありがとうございます、お母様」

「さ、紅音さんのために今日はとびっきり美味しいステーキを用意したの。食べましょ?」