「ほおぉぉ…『核』が、形を残したまま機能停止?」
遡る事、半日前である土曜日の晩の話。
橘邸でおもてなしをされた、その直後の話である。
明日、再びの来訪を約束して、午後10時頃には橘邸を出た。
お酒を呑んでしまったので、車は置いて行き、タクシーで橘邸を後にする。
そして、音宮陰陽事務所の代表である菩提剣軌は、社員である黒川玲於奈とは別行動で、単身すすきのへとやってきた。
…とある人物と会うために。
立ち並ぶビルの一角にある、一般人は絶対訪れないような高級感あふれる隠れ家的バーにて、約束の人物と顔を合わせる。
近況を世間話程度に話をしてから、本日起こった不可解な出来事の話題を持ちかけると、相手は見事に食い付いた。
「それ、絶対普通の封印術じゃないよね?ね?禁呪かな?……わあ、興味あるなぁ」
金髪の無造作なミディアムヘアに、ファッション性のある細身の黒いスーツを身に纏ったという、いかにも夜の世界に生きてます!といった見た目の男性は、ウキウキと声高になった。
40代半ばのおじさんのはずなのに、目をキラキラと輝かせて、まるで少年のようだ。