キュッとポーチのチャックを閉めるような音が聞こえ、城本さんたちの話題はいつの間にか駅の近くに出来た美味しいクレープ屋さんの話に変わっていた。

楽しそうに話す声と複数の足音がトイレからだんだん遠ざかっていき、シーンと静寂が戻ってくる。

私はそっと鍵を開けて洗面台のところを覗きこんだ。

……もう大丈夫みたい。

ホッと安堵のため息をついた私は、鞄を肩に掛け直して個室を後にした。

* * *

学校からの帰り道。

なんとなく特別寮に足が進まなかった私は近くの公園のベンチに座って、転校してからの出来事を思い返していた。

どうにかして私を特別寮から追い出そうと試行錯誤している城本さん……。

城本さんだけじゃない、ほとんどの女の子の標的になってる気がする。