あった、ケアチームステーション。
面接のときに、動物看護師の美丘さんが案内してくれた。
出勤初日は白衣に着替えたら、ここにきてって。
ケアステのドアのガラス越しに、広い背中のうしろ姿が見える。
男性は、面接のときにはいなかったから、初めて会う人だ。
「失礼します」
ドアを開け、背中に話しかけたら肩を大きく回して振り向いた。
「おはようございます」
ケアステに一歩踏み入れると、時が止まったみたいに動けなくなった。
「おはよう」
空の上のお日さまが、そのまま降りてきたみたいな明るい笑顔が、とても眩しくて、知らずしらずに心の中が弾む。
私のお腹にハート飼ってたっけ? 跳びはねて、どきどきが止まらない。
「新人さんでしょ、入っておいで」
リラックスして本棚に寄りかかっている、スクラブ姿の人が、微かに首を傾げて微笑む顔が人懐こくて、吸い寄せられるように近くまで歩を進めた。
「道沿いの満開の桜、見た?」
「は、はい、四月ですね」
返事も、そこそこ上の空。
桜もきれいだけれど、それより目の前の人。
爽やかな黒髪ショートが、清潔感あるブルーのスクラブにぴったり似合っていて、微笑みは、桜もかすむ美しさ。
私の瞳は、わがままになり、目をそらしたくないと、まじまじと視線を這わす。
満員電車の駅のホームからも、見つけられる自信がある。
首が痛くなるほど仰ぎ見ても、鼻の穴しか見えないくらい、凄く背が高い。
「じっと見られたから、こんなに穴があいた」
幅の狭い愛嬌のある、くっきりとした二重瞼の瞳。
そして、優美なラインを描く筋の通った高い鼻。
そこから、鼻の穴へと順々に指を差して見せてくる。
学生時代、毎日電車に揺られていたのに、こんなにかっこいい人は見たことない。
にやにやしちゃう。
「人は、あまりにも現実的ではない美しいものを目にすると、見惚れるより笑ってしまうって、だれかが言ったとか言わないとか」
小さく吐く息に笑い声を交え、いたずらっ子みたいに微笑む。
「きみは、どなたですか? 自己紹介も忘れるほど、俺になんとかか?」
「なんとかって?」
なんとかの意味を聞き返してきたのは、生まれて初めてだって笑われた。
だって、わからないんだもん。
「みんな、初対面で自己紹介も忘れるほど、俺に見惚れるんだよ。俺と関わる女性の通過儀礼だ」
えええ、自分で言う?
「とにかく、俺を見ると、女性は頭が真っ白になっちゃうんだってな。改めて自己紹介をどうぞ」
「は、はい!」
「落ち着け、ここは野外ライブじゃないんだ。そんなに、声を張り上げなくていいよ」
面接のときに、動物看護師の美丘さんが案内してくれた。
出勤初日は白衣に着替えたら、ここにきてって。
ケアステのドアのガラス越しに、広い背中のうしろ姿が見える。
男性は、面接のときにはいなかったから、初めて会う人だ。
「失礼します」
ドアを開け、背中に話しかけたら肩を大きく回して振り向いた。
「おはようございます」
ケアステに一歩踏み入れると、時が止まったみたいに動けなくなった。
「おはよう」
空の上のお日さまが、そのまま降りてきたみたいな明るい笑顔が、とても眩しくて、知らずしらずに心の中が弾む。
私のお腹にハート飼ってたっけ? 跳びはねて、どきどきが止まらない。
「新人さんでしょ、入っておいで」
リラックスして本棚に寄りかかっている、スクラブ姿の人が、微かに首を傾げて微笑む顔が人懐こくて、吸い寄せられるように近くまで歩を進めた。
「道沿いの満開の桜、見た?」
「は、はい、四月ですね」
返事も、そこそこ上の空。
桜もきれいだけれど、それより目の前の人。
爽やかな黒髪ショートが、清潔感あるブルーのスクラブにぴったり似合っていて、微笑みは、桜もかすむ美しさ。
私の瞳は、わがままになり、目をそらしたくないと、まじまじと視線を這わす。
満員電車の駅のホームからも、見つけられる自信がある。
首が痛くなるほど仰ぎ見ても、鼻の穴しか見えないくらい、凄く背が高い。
「じっと見られたから、こんなに穴があいた」
幅の狭い愛嬌のある、くっきりとした二重瞼の瞳。
そして、優美なラインを描く筋の通った高い鼻。
そこから、鼻の穴へと順々に指を差して見せてくる。
学生時代、毎日電車に揺られていたのに、こんなにかっこいい人は見たことない。
にやにやしちゃう。
「人は、あまりにも現実的ではない美しいものを目にすると、見惚れるより笑ってしまうって、だれかが言ったとか言わないとか」
小さく吐く息に笑い声を交え、いたずらっ子みたいに微笑む。
「きみは、どなたですか? 自己紹介も忘れるほど、俺になんとかか?」
「なんとかって?」
なんとかの意味を聞き返してきたのは、生まれて初めてだって笑われた。
だって、わからないんだもん。
「みんな、初対面で自己紹介も忘れるほど、俺に見惚れるんだよ。俺と関わる女性の通過儀礼だ」
えええ、自分で言う?
「とにかく、俺を見ると、女性は頭が真っ白になっちゃうんだってな。改めて自己紹介をどうぞ」
「は、はい!」
「落ち着け、ここは野外ライブじゃないんだ。そんなに、声を張り上げなくていいよ」