連休に入って仕事が休みなので、なずなは恋人の爽馬(そうま)と旅行を楽しむはずだった。

 しかし彼のスマートフォンの音が鳴り続けて、せっかくの二人きりの時間が台無し。

 爽馬はなずなから離れて、スマートフォンをチェックする。

「爽馬・・・・・・」

「何?」
  
 スマートフォンに視線を向けたまま、耳を傾けている。

 こっちを見てほしいことを言おうとしても、言葉が喉の奥で引っかかっている。

 彼が何か言おうとする前にすでに椅子から立ち上がっていた。

「私、小腹が空いちゃった。外に行くね」

「ちょっと待っ・・・・・・」

 止めようとする爽馬に無理矢理笑顔を作って、手を振って歩いて行った。

 エレベーターに乗った瞬間、後ろに凭れて深い溜息を吐いた。

 居心地が悪くて外に飛び出したものの、行く先は未定だ。

 何も決まっていない。

 適当にその辺を散歩して歩き続けていると、大きな公園が見えてきた。

 川沿いの道を歩いていると、人が少なく、静かな雰囲気だ。