休憩時間が終わり、再度英語クラスで猛勉強。私以外は。

私はプリントを解いている振りをして、頭の中でずっと郁人のことを考えていた。

谷口さんはきっと郁人のことが好き。

もしかしたら谷口さんの他にも郁人を好きな人が何人もいるのかも。

私が郁人の側にいるから告白できずにいるってことだよね。

でも私は郁人とは付き合っていないって答えてしまったから、きっと谷口さんは郁人に告白するんだろうな。

もし、郁人がそれを受け入れてしまったら?

どうしよう。郁人が私から離れていってしまう。

いや、私が郁人から離れなければいけない。

そんなのイヤだ。

『はい、そこまでー。プリントは後ろから回収してー』

先生のプリント終了の合図。

「あっ! やばっ!」

手元にあるプリントがシャーペンでグルグル円を描いた落書きで汚れてる。

しかも一問も解いていない。

午後の勉強会はこれで終わりだし、まぁいいか。

なんて悠長に考えていたら、

「はい、上野以外は夕食の部屋へ移動して。携帯は回収ボックスから受け取っていいよー」

「えっ? どうして私だけ移動しちゃダメなの?」

「上野、この解答用紙は何かな? 問題が解けないで白紙ならまだしも、落書きがひどいな。これは見過ごせないからな」

英語を教えてくれている奥原先生はまだ教師になって3年目の20代の先生で、生徒に人気のある先生。

生徒への理解があり、お兄さん的な存在なんだけど。

私の落書き解答用紙はスルーしてもらえなかった。

私は夕食の時間にもかかわらず、奥原先生の目の前でプリントをさせられている。

夕食はバイキング形式で席も自由だから有希や、もしかしたら郁人と一緒に食べられるかも、って楽しみにしていたのに。

おなか空いたし、問題が難しくて解けないし、泣けてくる。