「じゃあ、行ってくるよ」

「行ってらっしゃい」

そう言うと、夫の道哉はいつものようにキスをひとつくれて、私はその愛しい背中を見送った。


心から愛する人に、とても愛されている。

そして、当たり前のように、そんな日々がずっと続いている。

ありふれているようでも、そんな幸せな日常に今日も心から感謝した。


そして、私は私で、自分の仕事をやらなきゃ…!とミシンに向かった。



仕事と言っても、今の私は勤め人ではなく、稼ぎもない。

ハンドメイドのケアキャップを、可能な限り安く売っているのだ。

お金は材料費の分しか受け取らないことにしているため、利益はない。

要するに、ボランティアのようなものである。