『おっ!今日は彼氏さんも一緒か。見せ付けてくるね~。瑚々ちゃん。』

診察室に香澄くんと一緒に入って最初に言われた言葉は私の心をくすぐった。

『すみません。一緒でも良いんですか?』

後ろの椅子から申し訳なさそうな声で確認をとる香澄くんに対して、ほし先生は

『ダメな理由なんてない!』と即答。

面白くて、ふふっ。と笑うと『あ、でも......』と、ほし先生が口を開いたので、香澄くんは真剣な顔で聞こうとした。

『心音とか聞くときは我慢してね。彼氏さん......?』

そんなこと、わざわざ......って、いつも心音聞くのは女性の先生なのに......。

同じ部屋にその先生はいるけど、そんなこと分からないくらい香澄くんは動揺してる......。

『が......がんばります。』

しばらく表情筋が固まっていた香澄くんが意を決した答えをだすと、もちろん先生は爆笑し冗談と伝えた。

その後、いつもより騒がしい診察が終わり部屋にもどった。

『あっ、おかえり~。瑚々ちゃん。彼氏さんも!』

相変わらず、笑顔が絶えない魁......新川くんはとっても機嫌がよさそう。

それを見ても、香澄くんはもう機嫌が悪くないようで・・・安心。

一人ホッとしてると、香澄くんが新川くんに話しかけた。

『瑚々は俺の彼女なので好きになったりしないでください。』

香澄くんが見せ付けるって言ってた通り。宣戦布告。

それをみた新川くんは急に笑い出した。

一体なにが可笑しいんだと香澄くんは納得いってないみたいだけど。

『俺、彼女いるから、彼氏さんが心配してるようなことは何もないよ。』

香澄くんは、すっごく驚いたような顔をしてるけどどこかホッとしてる......?

『じゃあ、彼女いるのに他の子に可愛いとか平気で言ってるんですか?』

苛立ちを覚えた香澄くんの声は新川くんに聞こえたみたいだけど

『可愛いって言ったのは本音だけど、俺、彼女前にすると人格変わるらしいから君の彼女には手も足も出さないよ。』

人格が......変わる?この新川くんが?

「あの、新川くんは何歳なんですか?」

話を聞いてる限り、私とは歳が近くない気がする。

『ん?俺は18だよ?君達くらいのときから今の彼女と付き合ってて春から大学!』

やっぱり......4つといっても、かなり違うや。

でも、彼女持ちで年上で、人格が変わる......?とかはよく分からないけど、それを聞いた香澄くんの心配は消えたみたいで、いつの間にか交際期間が長いとかで先輩というように慕い、色々話し込んでいた。

ベットに入ると、新川くんが『あっ』と声をあげたのでビックリしてみると、

『今日、俺の母親の従兄妹くるから!』といった。

新川くんのお母さんの従兄妹だから、はとこってこと?

「良かったね。お見舞い来てくれるんだ。」

『俺と歳けっこう離れてるけど、すっごい優しいんだぜ!』

賑やかな日は楽しくて好きだから早く会ってみたいな。

「香澄くん、今日は何時までいられる?」

どうせなら、長く一緒にいたい。そう願いながら聞いた。

『うーん。母親には夕方って言われたから4時くらいかな。』

今、2時半だから、あと1時間半か。

『大丈夫だよ。また、明日もくるから。』

優しく頭を撫でてくれて、笑いかけてくれる香澄くんがカッコよかった。

『ひゅーっ!見せ付けてくれるね~。』

隣から新川くんの声が入った。その途端、香澄くんがシャっとカーテンでベットを囲みベットに押し倒された。

ちぇー。と新川くんの不満そうな声は私にも聞こえたけど香澄くんが止めてくれるはずがないことは私もいい加減覚えた。

そして香澄くんは押し倒しただけではもちろん止まってくれなくて上からたくさんのキスが落ちてきた。

香澄くんに限界!と伝えるまで、それは続いた。

香澄くんは満足してないようだけどこれ以上は体力が持たないのでベットから降りてもらい呼吸を整えると共にカーテンを開けた。

『あっ。もう着いた?うん。502号室だから!迷わないでね!』

新川くんは看護師さんにバレないよう、洗面所で電話をしていた。

「新川くん。今の電話、さっき言ってた?」

『うん。着いたって言うから。』

意外と方向音痴でさ~。と笑って教えてくれて香澄くんも落ち着いたみたいだし、時間も間に合ってよかった。

香澄くんには、後でお見送りするときに部屋から出て軽く!と言ってやめてもらったからそのときは覚悟してよう。