[釣り]

リュシカは釣りをしながら、あくびをしました。

堤防には草が繁っています。
昆虫がのどかに小さな河川の土手の草はらのなかを駆け回っています。

日常の埋め火なのです。
魔女は自然のなかに埋もれ、同時に自然を味わう。
いわば、人びとの人生は自然のなかに埋もれた埋め火、蛍なのです。

―あるとき男の帰還を待ちわびた女性がいたとか―

市井の人びとは歴史のなかで生き続けています。看取られずに。リュシカが文献調査を続けてきたのは、あまりに儚い人間の人生を熟考をするためでした。