壱琉が家を飛び出して行ってから数日が経ち
私と氷彗は完全に2人きりの”同棲生活”が始まった。

冒頭早々いろいろ語弊があるけど
わかりやすくまとめるとすれば
”出張中の長男と、残った次男と母”…みたいな?
自分で母親って言っちゃったよ。


「洗い物、手伝おうか?」

「あ、うん
 ありがとう…」

食器を洗う私の隣で
布巾を手にする氷彗。

家で2人きりのご飯なんて珍しくもないはずなのに。

「「・・・・・」」

なんだろうか、この緊張感に包まれた微妙な沈黙は。
水と食器の奏でる音をBGMに
静かな時間が流れていて
2人きりだって実感すると
お互いを意識してしまう学生時代の青春恋愛みたいで気恥ずかしい…

こういうときの世間話は何にするべきか…なんて考えている一方で、氷彗は拭き終わった食器を棚に戻し終わり、意味ありげに私の横に来て言う。

「ねぇ、詩菜
 俺とここを出ていかない?」

「えッ!?」

“世間話”とはかけ離れすぎてる彼からの突然の告白(?)に驚いたおかげで、手が滑ってしまい洗っていた包丁の刃先がシンクの中を舞う。
慌てて両手を離してもう少しで自分の手に刺さるところを寸前で回避。

あ、危なかった…
もう少しでこの辺りが血塗れの大惨事になるところだった…