**ファルロside


「オウガ、生きているぞ!!聖女様の力だ。万歳!!」

 戦場にこだまする人々の声を聞きながらファルロは立ち尽くしていた。

 幸せそうに微笑む二人。
 
 あんなに幸せそうに笑って……。



 セリカ嬢があんな風に笑いかけてくれたことはなかったな。

 ファルロはグッと奥歯を噛みしめ、顔をしかめた。

 俺は一体何をやっているのだろうか……。

 青い空を仰ぎ見ながらファルロは暴れることもなく、騎士に拘束され、王城の地下牢へと幽閉された。地下牢はジメジメとしていてカビ臭く、拷問後の血の匂いが残ってた。

 これから俺はどうなるのだろうか?

 このまま一生ここで過ごすのか……それとも処刑か……。

 目の前にあるゴミのような食事を見ながらジッと時間が過ぎるのをひたすら待つ。何日そうしていただろうか?何人かの足音が地下牢に響いてきた。

「出ろ!!」

 一人の騎士が強い口調でそう言い放つ。それは王太子に向かって言うには、あまりにも不敬だったが、誰も何も言わなかった。ファルロは何も言わず、騎士に従い外に出る。外の明るさに目を細め一瞬足を止めるが、すぐに騎士の後を追った。そして連れてこられたのは処刑人を運ぶ馬車の前。

 馬車が二台……。

 俺はこれから処刑されるのだな……。

 ファルロはそう思いながら馬車に乗ったが、出発する気配が全く無い。そのまましばらく待機していると、怒鳴り散らす声が聞こえてきた。

 聞き慣れたこの声……。

「わしはこの国の王だぞ!!貴様ら覚えておけ!!」

 処刑人が乗る馬車には窓がないため様子はうかがえないが、自分の父であるファルガルが外で暴れているようだった。最後くらい王族らしい気品を見せたらどうなのかと、ため息が出る。

 やっと馬車が動き出したかと思うと、すぐに目的の場所へと到着した。


 そこは城下町の広場だ。広場には処刑台が設置され、人々は今か今かと処刑人を待っていた。処刑人を乗せた馬車が広場に着くと人々の歓声が上がる。

 王族を早く殺せと民衆が騒いでいる。

 俺を……ファルロを殺せと。

 仕方がない。

 俺はそれだけのことをしたのだ。

 俺は人を殺し過ぎた。