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 セリカの歌声はアイド二ア王国にいる全ての人を癒やした。そしてその力は膨大に膨れ上がりアイド二アだけだなく、この世界すべての人々を癒やした。その出来事は奇跡の日として800年経った今でも語り継がれ、今ではその日が世界の祝日となっているほど有名な話となっている。

 セリカが世界中の人々を癒したあの日から、800年の月日が経っていた。



「いいか、ここまでをレポートにまとめて提出するように」

 大学の教団から教授の声が聞こえてくる。そこで授業終了のチャイムが校内に響き渡り、生徒達が一斉に教科書を閉じた。

「あー終わったね」

「芹花が歴史の講義を寝ないで最後まで受けてるの初めて見たかも」

 芹花(せりか)と呼ばれた少女がその声に振り返る。

「酷い!!私だって寝ない日ぐらいあるよ」

「やっぱり同じ名前の聖女様が登場する歴史は気になるよねー」

 ぷぷぷっと笑う親友に芹花は頬を膨らませた。

「ホントに、この名前のせいで迷惑しているんだから」

「えー。良いじゃない」

 笑いを堪えている親友を睨みながら芹花も笑った。

 私が産まれた日、パパは私の銀色の髪を見て一瞬で芹花と名前を決めたらしい。やたらと目立つこの名前はこの銀の髪と一緒になると更に目立つ。

 遠い国の聖女として産まれた悲劇の聖女セリカ様。愛する人を失い全ての力を使い果たしても歌い続けた聖女様は回りが制止するにも関わらず歌い続けたらしい。そして力尽きて恋人であるオウガに重なるようにして息を引き取ったと文献には残されている。

 その後アイド二ア王国は隣国であるアリエント王国に侵略をゆるし滅びてしまった。アイド二ア王国の王族達は聖女への非道ぶりが明るみとなり、かなりの非難を受け公開処刑されたとされている。