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 今日も変わらない日常を過ごすと思っていたセリカとオウガの元に、王直属の側近がやって来た。

 王からの呼び出し……。

 セリカはすぐに謁見用の豪華なドレスに着替え謁見の間へと急いだ。



 そして今、セリカとオウガは二人並んで、謁見の間にて頭を垂れていた。

「陛下この度は何用でございますか?」

 セリカは王と一通りの挨拶を済ませ、さっさと要件を済ませ帰るべく話を進めた。そんなセリカの態度を気にした様子もなく王は玉座に座りながら話し出した。

「隣国アリエント王国がそなたの住んでいた、元フィールド辺境伯領に兵を踏み入れて来よった。第一軍を向かわせたが、一触即発の状態だと言うことだ。いつ戦が始まってもおかしくない」

 王の言葉に謁見の間にいた人々の喉がゴクリとなる音が聞こえてくる。この戦争は避けては通れないのだと皆はその場で頭を抱えたくなっていた。

「そこでだ、オウガよ。ファルロと共にこの戦争の指揮をとってくれないか?最終の判断はファルロが行うが、その補佐を担ってもらいたい。よいか?」

 その言葉にオウガは目を見開き固まった。騎士団長を差し置いて俺が戦争の指揮を?補佐といえどもさすがにそれはどうなのかと……。王はそんなオウガに微笑んだ。

「聖女も行くのだ、側で守れて良かろう?」

 王の目が細くなるのが見える。

 そう言うことか……。

 セリカは両手を強く握りしめた。オウガは王からの命令に背くことは出来ない。ここで頷くことしか出来ないだろう。

 ふと、以前ファルロが言った言葉を思い出す。

『オウガが死んだらお前はどんな顔をするんだろうな?』

 あいつらは私が聖女の力を使わなければならない状況を作り出すとは思っていた。そして、あいつらは気づいたんだ、オウガを守るためなら私が聖女の力を使うと。

 聖女の力は使わないと決めたのに……。

 戦争でも何でもいい、こんな国など滅んでしまえば良いと思っていた。

 それなのに……。

 オウガを守るということは、イコールこの国を守るということだ。

 私にとってこの国など、どうでも良い。

 オウガを守れるなら、こんな国どうなってもかまわないのに……。

 セリカは両手を強く握りしめたまま、王とオウガの話を聞いていた。

 隣でオウガが忠誠を誓い、騎士の礼を取るのをそっとセリカは見守った。それは誇り高きこの国の騎士の姿で、惚れ惚れとするほど格好良かった。