次の日セリカは体の不調を訴え、一人部屋で過ごしていた。

 体がだるい……。

 昨日怒りにまかせて感情を爆発させてしまったせいなのかしら?オウガは何も悪くないのにオウガに当たり散らしてしまった。苛立ちが抑えられなかった。

 この人には信じてほしいと思った。

「オウガ……」

 ぽつりとオウガの名前を呟くと、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。

「オウガです。入室よろしいですか?」

 扉の外から聞こえてくる声にセリカは狼狽えた。昨日あんなに悪態をついたというのに、どんな顔をしたら良いのか、さすがのセリカにも分からない。

そうこうしているうちに扉の外からもう一度声がかかる。

「セリカ様入室しますよ」

 えっ?ちょっ……待ちなさよ。

 そう思った時にはオウガが入室して来てしまった。

 こんなに強引なオウガは初めてだった。待てと言えばいつまでも待つ忠犬が、入室を許可してもいないのに入ってくるなんて……。

 呆気にとられるセリカを横目に、何やらオウガがテーブルの上に並べていく。

「さあ出来ましたよ」

 オウガはそう言ってまだベッドの上に座り込んでいるセリカの膝裏に手を差し入れ、背中に手を支えると抱き上げた。

「キャーー!!オウガ何をするの!!」

 オウガに抱き上げられパニックのセリカは、拳でオウガの胸を叩いた。しかしそんなセリカの攻撃は鍛え上げられたオウガの体には何のダメージも与えられない。オウガはそのままセリカを落とさないようにギュッと腕に力を込めると、自分の胸を叩き続けるセリカを見つめ「ふっ」と瞳を細めた。

 えっ……。

 笑った……。

 セリカはオウガのそんな表情を見たことがなかった。いつもは眉間に皺を寄せているか、こちらを睨みつけている表情しか見たことがないのに。

 うそ……。

 どうして笑っているの?

 あまりの衝撃にオウガを叩いていた手は止まり、間近にあるオウガの顔をマジマジと見つめてしまった。すると見つめ過ぎてしまったのか、オウガはフイッと視線を逸らしてしまった。

 もう少し青く透き通る瞳を見ていたかった。と思うセリカだったが仕方が無い。