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 静まり返った部屋で誰かがゴクリと唾を飲み込む音が聞こえてくる。

 セリカの耳を疑うような話を、皆が黙って聞いていた。そんな事があり得るのかと……。辺境伯領は隣国との戦争で失われたはずだ……。それが王、自らの仕業だと……?そんなバカな話があってたまるかと……。


「くくくっ……セリカ嬢は作り話が好きらしい。皆が本気にしてしまったよ」

 ファルロの言葉に皆が胸を撫で下ろし安堵の溜め息をつく。

 作り話で良かったと……。

 しかしセリカは両手を強く握り絞め、小刻みに震え俯いた。涙をこぼさないようにギュッと目を閉じると顔を上げファルロを睨みつけた。

「そうですわね。作り話かもしれませんね……。それで?王を殺してくれるのですか?」


 話を戻されファルロは狼狽えた。


「クスクス……出来ませんわよね。それならしかたありませんね。聖女の力は使えません」

 そう言うとセリカは部屋から出て行った。