指先が頬を滑る。私の輪郭を確かめるように眉から頬骨、顎となぞった後、熱い手のひらが頬に添えられた。

「……美海(みうみ)

 初めて下の名前で呼ばれ、閉じていた目蓋を開く。互いの瞳がかち合った。

貴裕(たかひろ)さん……」

 彼の瞳が想像していたよりずっと情欲に濡れていて、彼がもうずっと長い間、この瞬間を待ち焦がれていたのだと悟る。

 熱い瞳に射抜かれ、私の身体の奥にちりっと小さく火が灯った。

「ずっと君に触れたかった」

 吐息と共にこぼれた言葉が、私の鼓膜を揺らす。

「……私も」

 こうなって、思い知った。私のほうこそ、この瞬間を待ちわびていた。

 あなただけのものになりたい。自分でも驚いてしまうほど強い気持ちが胸の奥から溢れ出てくる。

「美海」

 もう一度、噛みしめるように貴裕さんが私の名前を呼ぶ。口づけの予感がして、私は再び目蓋を閉じた。