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寝ているときに“すぴすぴ”言うやつが本当にいるのだと。

ベッドの中で眠るみくるを見て、思わずふっと笑ってしまう。



「……危機感なさすぎ」


こうして触れられても、起きるどころか。

安心しきったように落ちていったものだから、拍子抜けしてしまった。



あの日、オレンジに沈む世界で浮かべた、みくるの弱々しい表情。

その陰はもうどこにもなかった。


……が。



“堂くん、言わないで……っ”


耳を塞ごうとするその姿は、いまもまだ脳裏に焼き付いていた。



あのとき、自分はなにを言おうとしたのか。

みくるはなにを言われると思ったのか。




「はっきり言われたら今まで通りに戻れない、か……」



溶けそうなくらい熱い唇を、指でつう…となぞる。


ん、とみくるが微かに反応して。

うすくひらいた唇からもれた吐息が指先に触れる。