「アルティア、荷物は重くないか?」

「休憩まだだろ? 馬小屋の当番を代わってやるよ」


 秋が過ぎ、吐く息が白くなった十二月中旬。騎士団の訓練場で、私の騎士達が周りを囲んでいた。

 武闘会を終えてから、出来損ないの下っ端だという認識が一変したらしく、訓練への姿勢が認められ、こうやって優しくしてくれる人が増えたのだ。

 同期の騎士はかつて私に嫌がらせをしていたが、武闘会でチートスキルを使って勝ったことに罪悪感を覚えて絆創膏を渡してあげたのがきっかけで、ずいぶん好意的になった。


「ありがとうございます。ご心配なさらず。休憩は、さっきとりましたから」

「そうか。なら、俺も当番を手伝うよ。人数がいれば、早く仕事が終わるだろ」


 そのとき、騒がしい輪に低く甘い声が響く。


「アルティア」


 名前を呼んだのはハーランツさんだ。

 誰もが畏怖する異端の登場に周囲は凍りついたが、私は目を輝かせる。


「ずいぶんと楽しそうだな。友達ができたのか」

「はい。こちらが同期のボルドさんで、隣がローレミーさんです」