ギュウ——

 なにかに包まれている感覚と共に、重い瞼が開き目覚める。

「んぅ……っおはよぉ……」

 横にいる愛おしい人にそう言う。

「まだ寝てるもん〜」

「嘘でしょ、ほぉら、起きて」

 まったく、朝に弱いんだから。

 この甘えん坊なのは、幼なじみのななちゃん。実はいまアイドルをやっていて、人気絶頂。そして、私の婚約者、でもある……。

 ポチッとテレビをつけると、朝のくせにニュースにななちゃんが映ってる。

「わー俺じゃん俺カッコい〜」

「自分で言うなっ。朝ごはん、なに食べたい?」

 いつも通りツッコミを入れて、ななちゃんにそう尋ねる。

「くるちゃんが食べたい〜」

「もぉ!黙れっ!ほら、トーストでいい?」

「うんーあとスープ。やっぱりくるちゃ——」

 まくらをななちゃんの顔面に向かってボフッと投げて、顔を洗いに洗面所に向かった。

 顔を洗い終わり、タオルでポンポンと顔を拭いていると、案の定。

 ギュッとバッグハグをされた。

「髪の毛いい匂い。ってかくるちゃんちっちゃくて可愛いね」

「うるさいっ!歯磨きするから!ほらどけっ!」

「ひど〜いこのツンデレ〜」

「うるさいこのバカイケボ!」

「褒めてんのか貶されてるのかわからないなぁ」

 そんな言葉なんて無視して歯磨きを始める。

 ななちゃんとはいつもこんな感じだ。

「も〜無視したらお仕置きだから」

「んむっ……!」

 抱き上げられて、私は暴れる。

 それも、ドキドキお姫様抱っことかじゃなくて、まるで私のチビをバカにするかのような普通の抱っこ。

「やへろっ……!」

 肩をポンポン叩くけど、ビクともせずにソファに置かれる。

 すると、膝枕をしてきて、咥えたままの歯ブラシを動かし始める。