みんな揃って、無言。というか、絶句しているようだ。

この世のあり得ない物を見て驚愕したような表情をしている。

何か不味いことを言ってしまっただろうか……と、不安になった。

しかし、殺気が張り詰めたような重苦しい空気が流れていたが、その沈黙を破ったのは、翼。



「……おいおいおい。クロじゃね?」

「へ……」

「ああ」

銀太さんは無言で頷いていた。



黒、とは。



「……舞空嬢、見てもらいたいものがある」



そう言って、竜樹様は背後に控えていた侍従の男性に指示する。

侍従が取り出してこっちに持ってきたものとは……数枚の令嬢の姿絵?

それを私に手渡す。



「この中に、韋駄天様と一緒にいた女性がいないか確認して欲しい」

「こ、これは……」

「……最近、善見城で起きている令嬢の行方不明事件を知らないかい?」

「へっ……」

今度はこっちが絶句させられる番だった。



私の住む韋駄天城は忉利天といって、天帝様の帝宮・善見城の麓に広がる地域。

善見城で起こった事件は噂話として耳に入ることが多い。