いつの間にか、侍女の手によって食事の席は片付けられ、しっかりとお茶の準備が出来ていた。

皿に盛られた私のチョコレートは、そのまま置いてあった。



気を取り直して、天王様とお茶の席に着く。



雲ひとつない青空、風ひとつ吹かない穏やかな天候の中。

泉の水面に陽の光が反射して、泉のほとりの四阿は明るい。



「……」



そんな中、天王様はお茶を一口、口に含んでは何も言わず、泉のほとりの庭園の景色を眺めていた。

お茶と共に景色をも味わうように。

何かを思い出しては、感慨深い笑みを浮かべていた。



……聖威のことを、思い出しているに違いない。



昨日のお茶の時間で、天王様からお聞きした話なのだけれども。

何を隠そう、この泉のほとりの四阿は、夜な夜な聖威と逢瀬を重ねていた場所なのだそうだ。



夜も更けた頃、人気のないこの白い四阿で一人。

侍女服を着た美しい少女が、夜空に輝く月を黙って見上げている。

月の光に照らされている様が、何故か神々しく見えて。

天王様は、ひと目見たその時から、聖威のことを只者ではないと感じていたらしい。

……まさか、星見の最高峰【宿曜】だとは、思ってなかったようだが。