「【紫の門】?!……魔族でもない兄上が、魔族特化の術を行使するだなんて!まさか……」

「その、まさかだよ。聖威?」



架威がまた、不気味にニヤリと笑う。

その反応は、聖威の頭の中の推測が確信となる瞬間だった。



「まさか、まさか魔族を喰らって……!」

「……」



不気味な笑みを見せるのみという、架威の無言の返答は、その確信を肯定していると思える。



「……【紫の門】が開いたぞ!傍聴観衆の者は直ちに退避せよ!」




聖威が確信した事実に愕然としている間にも、竜樹様から傍聴観衆への避難勧告が場内に響く。

同時に、【紫の門】から魔族が一人、降り立った。

……魔獣だ。四つ足で、ボコボコとした緑の鱗と鋭い牙を持つ。一見、獣。

魔獣は吠える。獰猛に開いた口に光る牙は糸を引いており、金属が擦れるような耳障りな咆哮な、耳を塞ぎたくなるほど。



「うぉっ、出た。竜種アーガイル一匹ぐらいなら俺っちに任せんしゃい!」

「……あほ!一匹で済むわけないだろ!」



聖威の言葉の通りだ。

【紫の門】から出てきた魔獣は一匹だけではない。