ーーーある、晴れた昼下がり。



ただ木々が生い茂る野原の真ん中にある道を、幌馬車がゴトゴトと車輪の音を鳴らして進む。

石を踏んだら、ガタンと小さく揺れた。



幌馬車がゴトゴト、手枷を付けられた私を乗せて行く。

冤罪をかけられ、罪人に仕立て上げられた私を。



今、私。どこにいるんだろう……忉利天はもう出ただろう。まだ須弥山(しゅみせん)内にいるんだろうか。

ここは、辺り一面野っ原続きで動物一匹すら姿を見せない。誰も立ち入らないような辺境の山奥にいるということだけはわかる。



(あぁ……)



この三日間のことを考えると、泣きたい次第だ。悔しくて、涙が込み上げてくる。

でも、この幌馬車には表に御者、そして監視兵が一人、私の隣に張り付くように座っているから、涙はもちろん溜め息をつくことすら出来ない。

齢16の成人になりたてのまだまだ未熟な私は、背中を丸めて弱々しく、俯くしかなかったのだった。