「……あ、そう言えば。その『毒』についてですが」



自分の弁で散々流暢に語ったそこで、竜樹様は目を大きく開けて、何かを思い出したような仕草を取る。

話の切り替えとはいえ、とても白々しいような。

これ、演技?やだ、本当に恐い!貴方、本当に13歳ですか?日々、大人に混じって渡り合っていた生き抜く術の賜物だろうか。

あざとい。この人が味方で良かった……。



「伽藍姫の被毒の件につきまして、お伝えしたいことがあります。……裁判官殿、予め申請していた証人の招致、よろしいですか?」



法院裁判官が「認めます」と告げると、大広間の扉が開く。

そこには、一人の男性がこっちに向かって歩み進めている姿があった。

白い法衣を身に纏った、二十代半ばの栗毛の青年。白い法衣は『神殿』所属の証。

……前もって聞いていたため、私はこの人が誰かを知っている。



「……彼の名は、弥勒(みろく)。神殿勤務の治癒師でございます。……韋駄天様、この御方はどなたかおわかりですよね?彼はこの事件の際に、伽藍姫の毒の治療に当たった者です」