……何故、こんな神々しい高き身分の御方が、護衛も付けずに単独でこっちに向かってくるのか。



「聖威!何で、何で何も言わずに出て行ったたんだ……!」



突然現れた天王様の姿を前に、聖威はしばらく放心していた。

だが、直ぐに我に返ってハッとした表情になる。



「……舞空、行くぞ!」

「え?え?だ、だって」

「いいから!……早く!」



そう言って、腕を掴まれてグッと引っ張られる。

追いかけてくる天王様を背を向け、私の腕を引っ張ったまま走り出した。

「ち、ち、ちょっと!」

私もそれに引っ張られて、一緒に走り出すカタチとなる。

呼び止められているにも関わらず、応じずに逃げ出してしまったのだ。

というか何故、天王様が聖威を追いかけてくるの?!

この様子だと、この二人は面識あるようだ。……何も言わずに出て行った?

ワケもわからず、チラッと後ろを振り返ると、その神々しい身分の御方は、まだ追ってくるではないか。



「聖威、何で逃げるんだ!待って、話を……!」



だが、再度呼び止められても、聖威の足は停まることはない。

その横顔は、痛みを堪えていそうな。