何故、聖威は紅蓮の炎に向けて【相殺】を放ったのか。

何故、【相殺】で聖域の力と思われる紅蓮の炎は消えたのか。

……はたまた、私のそんな素朴な疑問に構っていられる状況ではなかった。





「聖威、貴様!まさか自らこの天界にまで追ってくるとは……!『聖域』の炎から私を庇い……借りを作ったと思うなよ!」

「そうではありません、兄上!『聖域』の力を持つ可能性の者に手当たり次第に手を掛けるなど、ただの殺戮に過ぎません!……これ以上、罪を重ねるのはおやめください!」



対峙する二人。

目の前に突然現れた妹に、顔を歪めて憎悪を向ける特級犯罪人と。

必死に訴えて諌める聖威。

しかし、特級犯罪人・架威が聖威の兄、とは……まさかの展開だ。



「あっ……!」



そこで私の視界に入ったのは、離れたところに転がっていた羅沙姫だ。

グッタリとしたまま、仰向けに倒れている。

……このままではいけない。羅沙姫の容態が心配だ。

あの危険な炎も消えて、危険な状況も取り敢えずは去ったと判断して、木の陰からこっそりと移動する。

対峙する聖威と特級犯罪人・架威を横目に、私は羅沙姫のもとへと赴いた。