Chapter1 ふたりだけの時間


「おはよう優奈ちゃん!」
「おはよう」
高校3年生。受験生というもの、模試やら補習やらがとんでもなく多い。面倒くさいことの方が多いし、好きで勉強しているわけでもない。
「ねえねえ、昨日Rainの新曲出たよね!めっちゃかっこよくなかった?」
「うん!キリの声カッコいいよね!!」
「やばい、大人テイストで震えてるもん」
最近流行りのバンド。インターネットで活動する人たち。最初はビジュアル系なのかな、と思ってたけど、聴いてみるといい曲が多い。だからと言って、あそこまで語ろうとする気にはなれないけど。
「優奈、おはよう」
「おはよう」
目の前に座ってきたのは、同じクラスの蓮くん。なぜか知らないけどロンっていうあだ名がある。波長が合うというか、話してて気が楽だからよく一緒にいる。
「また勉強してんのかよ?」
「することないし」
「よくやるぜ。さすが優等生」
「…嬉しくない」
優等生と言われるのも嬉しくはない。だけど、推薦入試のためには優等生でいなきゃいけない。ここまでする必要はないだろうけど、外堀は埋めたい。どう思われようが、真面目ちゃんでいかないと。
「ていうか、その鈴お気に入りだよな。ずっとつけてるし」
「なんか、そばに置きたくて」
「ふーん?」
引っ越しの荷物の中に、いつの間にか入っていた鈴。綺麗だし、飾りたいと思ったけど、とても大事な思い出がある気がしたから、とりあえず筆箱につけてる。でも鈴のくせにあまり鳴らない。
「今日も、放課後残るのか?」
「うん。そのつもり」
「ほんと懲りないよなあ。何が楽しくて花の手入れなんかしてんだよ?」
「…特には」
「ええ?なんかあるだろ?」
「…あるかも」
放課後、いつも花の手入れをしている。特に理由はない。
「…今日も、花の手入れするんだよな?」
「さっき言ったじゃん」
「わかった…」
なにか、様子が変だ。