パチリ、と目を覚ますように意識を取り戻した。相変わらず綺麗な例の桜が揺れて花びらを散らしている。冬馬はどうなったのか体を起こそうとすると、全く動かない。それどころか指一本動かすことも出来ず、視線すらも変えることが出来ない。
 そして呼吸すらも出来ていないことを知ると、私は自分が死んだことを悟った。
 恐らく幽霊と言われる存在になったのだけど、世間一般に言われているように死んだ体から離れることが出来ない。
 視界には桜しか見えないが、近くで冬馬の怯えた声が聞こえる。