ーー神宮寺エマsideーー

すべて思い通りに事が運んだ。

咲綾先輩がイジメる側に回り、忍のイジメ返しの相手に選ばれるという事態になってしまったことを除いては。

他人から傷付けられ痛みを知っているはずの人間が、どうして立場が変わっただけでまた同じことを繰り返してしまうんだろうか。

スマホを耳に当て桃さんへ報告をする。

「桃さん、イジメ返しが終わりました」

『そう。お疲れさま』

電話口の桃さんの声を聞くとホッと気持ちが落ち着く。

一度息を吐きだし、こう告げた。

「次のイジメ返しを始めます」

『もうターゲットは決まっているの?』

「はい。次のターゲットは……あの女です」

『あの女?』

「リマを殺したあの女にイジメ返しをします」

ようやく見つけた。最後のターゲット。次のイジメ返しは簡単にはいかないだろう。

でも、それでもいい。必ずリマの復讐をする。

『無理はしないで』

桃さんの声はいつだって優しくエマを包み込んでくれる。まるで、リマ……、双子の姉のようだ。

「はい」

電話を切ると、まっすぐ前を向いた。部屋の一面全てに貼り出されたあの女の写真を睨みつける。

リマにしたことを忘れて楽しそうな日々を送るあの女。

リマが受けた苦痛以上の苦しみを必ず与えてやる。

そして、必ず後悔させる。イジメという卑劣な行為に手を染めたことを。

「絶対に許さない」