「寒…」

時間は22時。

コンビニのバイトが終わって、
次は居酒屋のバイトの時間だ。


やっぱりなんだか行きたくない。

ため息をつきながら
従業員が使う裏口から入ると、在庫チェックをしていた店長がしゃがみこんでいた。


「お、ひま。おはよう。」


私の「ひまり」という名前を馴れ馴れしく「ひま」と呼ぶこの男が
やっぱり好きになれない。


「ん?元気ないじゃん。俺が話聞いてやろうか?」


書きかけのチェックノートを棚に
ボンっと置いて近づいてくる。


年齢は32歳とか言ってたっけ。
19歳の私なんて、簡単に落とせるとでも思っているのだろうか。


「いえ、べつに。」

「ひまってさ…施設育ちなんだよね?なんかさ、困ってることないの?」


距離がどんどん近くなる。


「もし、ひまさえよかったら…。」