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 事件から数ヶ月が経ち、ラングール国では平和な日々が続いていた。
 事件を首謀したブレンダン侯爵家は爵位を没収されて、処分を決めるための裁判待ちだ。マリベルは、遠い僻地の修道院に送られたと聞いている。

そして、魔獣舎では毎日のように賑やかな光景が繰り広げられていた。
 結局、魔獣舎には元々いた四匹の魔獣達に加え、今も三匹のフェンリルと一匹のファイヤーレオパード、それに一角獣が残っている。

 それに伴い、魔獣係は全部で五名に増員された。全員が他の業務と兼務しており、チーフはリンダが勤めている。

 なお、この増員に当たっては選任が難航するだろうとミレイナは覚悟していた。なぜなら、魔獣係は数あるメイドの仕事の中でも最も嫌煙される職種なのだ。
 初めてミレイナが魔獣係になった際も、『誰しもが嫌がり一週間もたない』と言われていたほどだ。

 ところが、蓋を開ければ新規魔獣係の募集には応募が殺到したという。

『だって、魔獣係になると陛下の側近の方達と高確率でお知り合いになれるでしょう?』
『それに、魔獣ってよくよく見ると可愛いわ。ふわふわしているし』

 理由を聞くと、彼女達は屈託なくそう言って笑った。

(なんにしても、沢山魔獣係が増えてくれてよかった!)

 ミレイナが心底ほっとしたのは言うまでもない。