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 その知らせがジェラールの元に届いたのは、すっかりと夜も更けたような時刻だった。
 執務室で今日の公務の残りを確認していたところ、荒々しくドアがノックされた。

「ジェラール陛下、至急でお知らせしたいことが」

 そこに現れたのは、側近のラルフとウォルトだった。
 今日の仕事は終わらせたと思っていたのにと、ジェラールは訝しむ。ふたりの険しい表情から、只事ではないとすぐに感じ取った。

「こんな夜更けに、どうした? ふたり揃ってここに来るなど、何事だ」
「ミレイナがいません」
「ミレイナがいない?」

 単刀直入なラルフのその言葉の意味が理解できず、ジェラールは聞き返した。

「メイド達の寮に門限になっても戻ってこないと、メイド長に連絡があったようです」
「今日はウォルトの奥方にお茶会に誘われたから参加すると言っていた。まだオルコット邸にいるのでは?」
「そう思って妻のスザンナに確認したのですが、日の明るいうちに解散したと」
「なんだと? ウォルト、それは間違いないのか?」