◆◆    5  

 その二週間後。
 ミレイナは王宮の一室でセシリアとテーブルを囲んでいた。

「頼まれたものは用意できたわ」

 セシリアはそう言うと、テーブルの上に沢山のブラシを並べる。ミレイナはそのひとつを手に取り、じっくりと眺めた。

(すごい。希望通りだわ)

 それは、粗い目と細い目が両側に付いたコームだった。
 ペットショップで毎日のように動物達をブラッシングしていた懐かしい記憶が甦る。

「こんなものでいいの?」

 セシリアもそのブラシのひとつを手に取ると、確認するようにミレイナを見る。

「はい。希望通りの出来栄えで、素晴らしいです」
「なら、よかったわ。ところで、どうしてこんなに色んな種類のブラシを作る必要があったの?」
「これはペットのブラッシングするときに使う道具なんです。種類が多いのは、毛の長さや用途、毛質によって使い分けるからです。例えば、フェンリルだったら最初にこの粗めのコームで抜け毛を絡め取って──」

 セシリアが用意してくれたのは、ミレイナから依頼されて作成したブラッシング用のブラシやコームのサンプルだった。全て、前世でペットショップをしているときに使用していた物を真似て作ったものだ。