「俺、片山さ────」 「ごめんなさいっ!!」 「…………え?」 「わ、私、早く帰らなきゃ、えっと……用事がっ」 「片山さん」 「とにかく!突然こんなことはダメなのでっ!」 私の情け無い大声で水瀬くんが怯んだ隙に、手首を掴む手を外し、いつの間にか落としていた鞄を拾い上げ、その場を後にした。 名前を呼ばれた気がしたけど、保健室を出た後もしばらく走り続け、昇降口に辿り着き、下駄箱に寄り掛かって、やっと深く呼吸ができた。