「美波、おはよ!」
 教室に入ると、あずみにぽんと肩を叩かれた。
 今日は黒髪をポニーテールにしている。高い身長によく似合っていた。
「おはよう。あ、それ、【スターライト ティーンズ】の付録の……?」
 ゆらっと黒髪が揺れたとき、見えたもの。
 まとめているところに巻かれている水色のシュシュ。
 美波は見覚えがあった。
「うん! そうなんだ!」
 北斗の撮影見学の申し込みの用紙のために、あずみが何冊も買った雑誌【スターライト ティーンズ】についてきたものだ。
「すごくかわいいよ!」
「ありがと!」
 美波のほめ言葉に、あずみはやっぱりにこっと笑ってお礼を言ってくれた。
 そのあと、なにかに気付いたような顔をして、美波の腕をぐいっと引いた。
「ねぇ! 北斗くんだよ!」
「え?」
 つられて窓の外を見ると、グラウンドで「オツカレー!」と元気のいい声がしている。
 陸上部だ。
 もちろん北斗の姿もあった。タオルで汗をぬぐっている。
「今、朝練終わったみたいだね。頑張るねぇ」
 あずみは嬉しそうな声音になった。
 美波も嬉しくなってしまう。
 北斗の頑張っているところを見るのが好きなのだ。とても輝いていると思うから。
 それはモデルでも、陸上部でも同じだと思う。
 北斗が好きでやっていて、また本気で打ち込んでいるのがわかる。そのことがまた嬉しい。